大阪中之島美術館で始まった「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展」。開催前日のプレオープンで、一足早く見てきました。
フェルメールの真作は2点。それを聞いたとき、私は「あの広い美術館で、2点だけをどう見せるのだろう?」と思いました。
けれど、実際に待っていたのは、作品数を追いかける展覧会ではありませんでした。遠くに少女を見つけ、少しずつ近づき、最後に真正面で目を合わせる――一枚の絵と、これほど深く向き合えることに驚いた展覧会です。

フェルメール2作品と、17世紀オランダ絵画10作品
今回展示されるフェルメール作品は、《ディアナとニンフたち》と《真珠の耳飾りの少女》の2点です。
ただし、会場にある絵が2点だけという意味ではありません。所蔵館であるオランダ・マウリッツハイス美術館から、17世紀オランダ絵画の名品10点も来日。合計12点の作品と大型映像を通して、フェルメールが生きた時代から少女との対面へ導かれる構成です。
展覧会の基本情報
- 会期:2026年8月21日(金)~9月27日(日)
- 会場:大阪中之島美術館
- 入場:日時指定制
美術館窓口での通常の当日券販売はありません。空き状況や追加抽選、公式リセールについては、展覧会公式チケットページで最新情報を確認してください。
街を歩くところから、フェルメール展は始まっていた

最寄り駅を出ると、周辺にはフェルメール展の案内があり、ダイビルのマスコットキャラクターも道案内。会場に着く前から、街全体で迎えてもらっているような気分になりました。
展示の始まりは、同じ17世紀に描かれた宗教画や肖像画、風俗画です。最初から有名な少女だけを見せるのではなく、当時の人々がどのような絵を求め、どのような暮らしをしていたのかを少しずつ知っていきます。
約20メートルのスクリーンで、フェルメールの光に包まれる
時代背景を見た先に現れたのが、全長約20メートルの大型スクリーンです。約8分の映像で、フェルメールの全作品が次々に映し出されます。
小さな作品では見落としそうな筆の跡や、光を粒のように置いた表現まで大きく見える。作品を「説明される」というより、フェルメールの光の中へ入っていくような時間でした。

若きフェルメールの《ディアナとニンフたち》

映像の先で出会う1点目が、《ディアナとニンフたち》です。
室内で手紙を読んだり、楽器を奏でたりする人物を描いた画家という印象が強いフェルメールですが、この作品は20代前半ごろに描いた神話画です。
神話の華やかな事件ではなく、狩りを終えたディアナが静かに足を洗ってもらう場面が描かれています。初期の作品なのに、のちのフェルメールにつながる静かな時間が、すでにここにあるように感じました。
遠くに少女を見つけた瞬間から、鑑賞は始まっていた

次はいよいよ《真珠の耳飾りの少女》です。深い青色の通路を進むにつれて、期待が高まっていきます。

展示室へ入った途端、部屋の奥に少女を発見しました。
「あっ、いた」
遠くの青い空間に、金色の額縁と少女の顔が小さく浮かんでいます。頭上には目や唇、ターバン、耳飾りなどを大きく切り取った幕。少女の細部に導かれながら、列は少しずつ作品へ近づいていきます。
並んでいる間も、作品が隠れてしまうわけではありません。離れた場所から眺めたり、位置が変わるたびに横から見たりできます。そして最後に、真正面へ。
遠くに見つけた瞬間から、少しずつ近づいていく時間そのものが、少女に会うための体験になっていました。

「大阪に来てくれて、ありがとう」

少女の目、わずかに開いた唇、暗い背景の中に浮かぶ青と黄色のターバン。写真で何度も見てきた少女が、今、本物の絵として目の前にいます。
立ち去るとき、私は絵の中の少女に小さく頭を下げました。
大阪に来てくれて、ありがとう。
もちろん、声には出していません。本当にここで本物の作品を見られたことがうれしくて、自然に心の中から出てきた言葉でした。
名画を「見た」というより、遠い場所から大阪まで来てくれた少女に、ようやく「会えた」。私にとっては、そんな時間でした。
この少女は誰? 肖像画とは違う「トローニー」
作品を見て、私は「あの少女はいったい誰なのだろう?」と疑問に思いました。
調べて知ったのが、「トローニー」という言葉です。これは、特定の人を本人そっくりに残すための肖像画とは少し違います。
実際にモデルがいたとしても、画家が描きたかったのは「この人は誰か」ではなく、見慣れない衣装や顔の向き、光、表情を組み合わせて作る魅力的な人物像。フェルメールは、モデルの日常の姿をそのまま写すのではなく、東洋風のターバンや耳飾りを加え、作品の中に新しい少女を生み出したのかもしれません。






「画家はモデルを忠実に描くもの」と思っていた私には、この描き方がとても新鮮でした。誰なのか分からないからこそ、時代や国を越えて、見る人がそれぞれの物語を想像できるのかもしれません。
耳飾り、背景、そして少女がたどった道
あの大きな耳飾りは、本物の真珠?
耳飾りはとても大きく、本物の真珠ではなく、光を反射するガラス製の飾りだった可能性や、画家が想像して描いた可能性も考えられています。断定はできませんが、ほんのわずかな明るい絵の具で、丸く輝くものに見せていることに驚きます。
背景は、最初から真っ黒ではなかった?
現在は黒く見える背景も、調査では、もともと暗い緑色のカーテンのような表現があったと考えられています。時間の経過で色が変化し、今の見え方になりました。
約200年後、わずか2ギルダー30セントで
作品は長い間フェルメールの絵だと知られず、1881年の競売で2ギルダー30セントという低い価格で落札されました。購入したアーノルダス・デ・トンブは、のちに作品をマウリッツハイス美術館へ遺贈します。そのおかげで、今では世界中から人が会いに来る少女になりました。
スーベニアショップも大盛況

鑑賞後のスーベニアショップは大混雑。サクマドロップスや、人気洋菓子店「ちひろ菓子店」とのコラボ商品など、限定グッズが並んでいました。作品を見たあとは、少女の青や黄色を使った商品にも自然と目が向きます。
「真正面で見られますよ!」と目を輝かせた二人
正式開幕後、街で展覧会のスーベニアショップの紙袋を持った若い女性二人に出会い、思わず声をかけました。
一人は長野県から、もう一人は神奈川県から、この展覧会のために大阪へ来たそうです。《真珠の耳飾りの少女》を見るまで約30分並んだといいますが、「真正面で写真も撮れました。真正面で見られますよ!」とうれしそうに目を輝かせていました。
二人は「今回が日本で見られる最後かもしれないと思って来ました。行ってよかった」と話していました。これが最後の来日だと公式に発表されているわけではありません。それでも、遠方から会いに来たくなるほど、ファンにとって今回の展示は特別なのだと改めて感じました。
なお、待ち時間は曜日や時間、混雑状況によって変わります。30分は、私が街で出会った二人が来場したときの一例です。
「たった2点」ではなく、2点を深く見る展覧会
作品数だけを見れば、フェルメールは2点です。けれど、時代背景を知り、大型映像で細部に触れ、《ディアナとニンフたち》を経て、遠くから少しずつ《真珠の耳飾りの少女》へ近づいていく。
その流れがあるからこそ、最後の対面は、ただ有名な絵を見る以上の体験になりました。
写真で何度も見た作品でも、本物の前に立つと、感じるものはまったく違います。大阪まで来てくれた少女に会える、この貴重な機会。これから訪れる方にも、真正面に立つ数秒だけでなく、遠くに少女を見つけた瞬間からの時間を味わってほしいと思います。
詳しい開催情報は、展覧会公式サイトでご確認ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 今後も旅の情報ともに失敗談も書いていきます。どうぞよろしくお願いいたします!
にほんブログ村


コメント