SFC(スーパーフライヤーズカード)とは?
ANAの上級会員だけが申し込めるクレジットカードです。年会費を払い続ける限り、飛行機にあまり乗らなくても、空港ラウンジや優先搭乗などの上級会員サービスを受け続けられるのが特徴でした。
2026年、このSFCの制度が変わることになりました。2028年4月からは、カードでの年間決済額が300万円以上かどうかで、受けられるサービスが2つに分かれます。
2026年9月29日、ANAからSFC制度改正の最終発表がありました。
私が最後までかすかに期待していたのは、年間300万円の決済に届かなくても、スターアライアンス・ゴールドだけは残ることでした。
けれど、その期待は叶いませんでした。SFC LITEでは、スターアライアンス・シルバーになります。
ANAの最終発表を読んで、私はこれからどうするかを決めました。
年間300万円を達成するための「決済修行」はしません。SFC PLUSは目指さず、SFC LITEを受け入れます。そして、SFCも当面は解約せず、持ち続けることにしました。
答えを決めたからといって、気持ちまできれいに整理できたわけではありません。
これは、ANA上級会員歴25年以上、そのうちSFC歴23年の私が出した答えと、それでも残っているモヤモヤの話です。

1.10年間、財布の奥で眠っていたSFC
20年以上前、激務の出張生活の中で手に入れたSFCゴールドカード。
取得後も、東京―大阪間を中心に飛行機を使う出張は続いていました。仕事が予定より早く終わると、私はいつものように早い便のキャンセル待ちをしました。
あるとき、SFC会員だった私は早い便に乗れましたが、上級会員ではなかった同僚は乗ることができませんでした。
「持っていてよかった」
SFCの力を実感した出来事でした。
けれど、飛行機を使う出張は少しずつ減っていきます。そしてほどなく、出張の多かった会社を退職しました。
退職後は、たまに空を見上げて飛行機を眺めるだけ。実際に飛行機へ乗ることは、ほとんどなくなりました。
SFCゴールドカードは、上級会員のカードとしてではなく、普段の買い物に使う普通のゴールドカードとして、財布に残りました。
飛行機に乗らないまま、約10年。それでも解約しなかったのは、「せっかく手に入れたカードだから」という気持ちがあったからだと思います。
2.60歳からの一人旅|中国で受けた最初の洗礼
「60歳になったら、絶対に一人旅に出よう」
行き先は、ずっと憧れていたパリと決めていました。
ところが、初めての一人旅です。パリ旅行をじっくり計画すればするほど、慎重になっていきました。
そんなとき、ふと思い出したのが、ロンドン便で初めて過ごした空港ラウンジでした。
「あんなラウンジに、いろいろ行ってみたい。そうだ、空港ホッピングをしよう」
財布の奥で眠っていたSFCがあれば、エコノミークラスでも空港ラウンジに入れます。10年ぶりに、SFCの出番が来たのです。
選んだのは中国でした。仕事で行ったことがあり、「一度行った国なら何とかなるだろう」という気持ちもありました。
関西空港から西安へは直行便もありましたが(ANA便ではありません)、私が選んだのは、わざわざ乗り継ぎを重ねるルートです。
伊丹→羽田→北京→西安→仁川→関西
2泊3日で6つの空港を巡る旅。貯まっていたANAの2万マイルを使いました。
今思えば、初めての一人旅にしては欲張りすぎた計画でした。
北京空港で乗り継ぎ口を探すのにも苦労し、隣席だった方に案内してもらう始末。さらに西安行きの機内では、雷雨のため出発時間を過ぎても飛び立ちません。

機内では怒号が飛び交い、中国語のアナウンスが流れました。やがて乗客が荷物を持って次々に降り始めます。けれど、中国語が分からない私には、何が起きているのか理解できませんでした。

飛行機が飛ばず、理由も分からなかった間、SFCデスクにも電話してみました。しかし、コール音が続くだけで、誰も出ませんでした。
そこで日本にいる知人へ電話し、CAさんと直接話してもらって、ようやく雷雨で飛べない状況を理解しました。

西安への到着が大幅に遅れると分かり、予約していたホテルは楽天トラベルへ連絡して、いったんキャンセルしました。
朝までこのまま待つのだろうと思い、私は飛行機を降りず、機内でうとうとしていました。ところが、しばらくすると飛行機は突然動き出し、そのまま離陸したのです。
結局、西安空港に着いたのは早朝4時。空港内にいたのは、同じ便を降りた人たちと、しつこく声をかけてくる運転手たちだけでした。メーターを使わず、「言い値」で乗せようとする客引きです。泊まる場所のない私は、客引きから逃れるようにベンチへ座り込みました。
しばらくすると誰もいなくなり、私は空港で朝まで休むことにしました。初めての一人旅、その最初の夜が空港泊になるとは思ってもいませんでした。

ベンチに横になっても、眠っている間に荷物を盗まれないか、危険な目に遭わないかと不安で眠れません。SFCデスクとVISAゴールドデスクにも電話しましたが、深夜は相談できませんでした。

そのとき、ふと思いつきました。
「キャンセルしたばかりのホテルなら、まだ部屋は空いているかもしれない」
空港にいるよりホテルへ向かった方が安全だと判断しました。しかし、残っていたのは、さっき言い値で声をかけてきた運転手の車だけでした。ほかに方法がなく、ホテルの名前と住所を運転手に見せて乗り込みました。運転手が示した金額ではなく、メーターを使うよう身振りで頼みました。それが、そのときの私にできる一番安全な方法だと考えたのです。
※海外の空港では、メーターを使わずに金額を交渉してくる運転手によく出会います。できるだけ正規のタクシー乗り場から乗り、乗る前にメーターを使うか確かめると安心です。
ホテルへ向かう車内から楽天トラベルへもう一度電話しました。数秒のコールでつながり、事情を伝えると「ホテルへ電話しておきます」と言ってくれました。

早朝5時ごろホテルに着くと、フロントにはスタッフが待っていました。楽天トラベルから連絡が入っていたため、中国語で一から事情を説明する必要もありませんでした。
部屋に入り、ベッドへ横になった瞬間、ようやく全身の力が抜けました。このときは本気で、「これからの旅は楽天トラベル一択だ」と思いました。
肝心のラウンジ巡りは、思っていた以上に楽しめました。伊丹では国内線のラウンジ、羽田ではANAとシンガポール航空のラウンジをはしごし、帰りの仁川でもラウンジを2か所巡りました。最後に着いた関西空港では、到着後にカードラウンジへ寄ったほどです。
ただ、西安の空港では、中国国際航空のラウンジで「エコノミークラスだから入れない」と断られました。スターアライアンス・ゴールドだと説明しても、だめでした。
上級会員のカードがあっても、すべての場面で助けてもらえるわけではありません。それでも、この強烈な失敗が私の一人旅の扉を開きました。
3.言葉の通じない旅で、ラウンジが旅の締めくくりになった
次に向かったのは、ずっと憧れていたパリでした。当時は今ほど翻訳アプリも身近ではなく、ミニ英語辞書と旅行英会話の本が頼りでした。
パリのパン屋では、欲しいパンを指して「I want to buy it.」と言ってみました。ところが私の発音が伝わらず、店員さんはフランス語で返してきます。何を言われたのか分からず、結局、買うのを諦めました。パン一つ買うだけでも、当時の私には大冒険でした。
その後は台湾をはじめ、さまざまな街を一人で歩きました。電車やバスを間違え、言葉が通じず、失敗ばかりの旅でした。
一人旅では、言葉の壁、慣れない交通機関、道に迷う不安など、旅の間ずっと小さな緊張が続きます。
帰国便の空港に着くと、「病気にもならず、事故にも遭わず、ここまで無事に来られた」と、ようやく肩の力が抜けます。
楽しかった旅行も、もう終わり。あとは日本へ帰るだけです。
長い列に並ばずに、優先チェックインカウンターへ進める。正直に言えば、少しだけ誇らしい気持ちもありました。それ以上に、重い荷物を持って長い列に並ばずに済むことが、本当にありがたかったのです。
手続きを終えてラウンジへ入り、荷物を横に置いて座る。食事と飲み物をいただきながら、旅の緊張と疲れをゆっくり下ろしていく。
私にとってラウンジは、旅の最後を穏やかな気持ちで締めくくってくれる場所でした。
4.最初の制度改正案に感じた「梯子外し」
23年間、年会費を払い続けてきたのは、「持ち続ければ、この安心は続く」と信じていたからでした。その前提が、ある日突然変わる。私が感じたのは、登った梯子を後から外されたような気持ちでした。
年間のANAカード・ANA Pay決済額によって「SFC PLUS」と「SFC LITE」に分けるという最初の発表を知ったとき、胸の奥にやるせなさが広がりました。
年間300万円。その金額を無理なく決済できる人ばかりではありません。私もできません。
現在の私がメインで使っているのは、旅先で部屋のアップグレードや朝食の恩恵を受けられるヒルトンカードです。ANAカードへ決済を移せば、そちらで得ている特典を失います。
この無料宿泊券で、自分のお財布ではとても手が出ない高級ホテルにも泊まってきました。

ANAカードへ決済を集めればSFC PLUSに近づく。一方で、ヒルトンカードの宿泊特典は手放すことになる。どちらも旅のためのカードなのに、片方を選ぶために片方の価値を失う。その選択は、今の私の暮らしには合いませんでした。
必要のない買い物をしたり、暮らしに合わないカードへ支払いを集中させたりしてまで、条件を達成したいとは思いませんでした。
一方で、簡単に手放せるカードでもありません。ラウンジ、空席待ちの優先順位、海外のスターアライアンス加盟航空会社で受けてきたサービス。私が守りたかったのは、旅先で頼りにしてきたスターアライアンス・ゴールドでした。
5.9月29日の最終発表|救われた部分と、消えた期待
最終発表後のSFC PLUSとSFC LITEの違いは、こちらの記事で詳しく整理しています。

多くの利用者の声を受け、ANAは当初案を見直しました。公式サイトでは、次のように発表されています。
今般、お客様からいただいたご意見や実際のご利用状況を踏まえ、ANAスーパーフライヤーズカードに関する制度・運用の一部を見直すことといたしました。
出典:ANA公式「ANAスーパーフライヤーズカードのサービスについて」(2026年9月発表)
最終的な制度の要点を、私に関係する範囲で整理します。

- 最初の判定期間は2026年12月16日〜2027年12月15日
- 新しい区分でのサービス開始は2028年4月
- 年間決済額300万円以上は「SFC PLUS」。スターアライアンス・ゴールドを継続
- 300万円未満は「SFC LITE」。スターアライアンス・シルバーへ
- SFC LITEでも、国内線ANAラウンジは混雑時を除いて利用可能。国際線はANAグループ運航便利用時に羽田・成田・ホノルルのANAラウンジを利用可能
※制度内容と利用条件は変更される可能性があります。最新情報はANA公式「スーパーフライヤーズカードのサービスについて」をご確認ください。
最終発表で、羽田・成田・ホノルルのANAラウンジを利用できる道が残ったこと自体は、ありがたいと思いました。
ただし、ホノルルを除けば、利用するのは主に日本から出発するときです。
私が一人旅で特にありがたいと感じてきたのは、海外旅行を終えて日本へ帰るときのラウンジでした。
SFC LITEになると、スターアライアンス加盟航空会社の海外ラウンジは利用できません。海外へANA便で出かけても、ANAラウンジがある海外空港はホノルルに限られます。
台湾ではエバー航空、韓国ではアシアナ航空、バンコクではタイ国際航空のラウンジに助けられてきました。
そしてもうひとつ。2017年、台風の桃園空港で最後の1席に滑り込めたのは、ゴールドのキャンセル待ちの順番があったからでした。シルバーにも優先はありますが、ゴールドの下です。この順番は、プライオリティ・パスでもお金でも買えません。

ANAラウンジが一部残ったから安心した、と単純には言えません。残ったものは確かにある。でも、私が頼りにしてきた2つ——旅の最後のラウンジと、いざという時の順番——は戻ってきませんでした。その両方が、今も残るモヤモヤの正体です。
6.私が出した答え|SFC LITEと旅を続ける

では、これから海外旅行をどうするのか。
私は、海外空港のラウンジについては、プライオリティ・パスで補うことにしました。楽天プレミアムカードに付帯するもので、無料で使えるのは年5回です。

プライオリティ・パスで利用できるラウンジが、スターアライアンス・ゴールドで利用してきた航空会社ラウンジと同じではないことは分かっています。設備や食事、落ち着きや使いやすさも、空港によって違います。
それでも、今の自分に合う方法だと考えています。
ANAは、これからも好きな航空会社です。制度が変わったからといって、ANAに乗らなくなるわけではありません。国内線だけでなく、海外へ行くときも利用したいと思っています。
長距離便では、これまでどおりアップグレード対象運賃の航空券を購入し、マイルでビジネスクラスへのアップグレードを狙います。
実は私は、このアップグレード対象運賃を「海外発券」という方法で、日本で買うよりずっと安く手に入れてきました。
特にビジネスクラスにしたいのは、旅を終えた帰国便です。帰国便がビジネスクラスなら、優先チェックインやラウンジ、優先搭乗など、私がスターアライアンス・ゴールドに求めてきたサービスの多くを受けられます。
SFCは、今すぐ解約はしません。一度解約すれば、簡単には戻れないからです。区分の判定は毎年行われるので、年会費に見合う使い方ができているか、1年ごとに見直していきます。
※すでに解約してしまった方へ:ANA公式によると、2026年4月23日〜9月29日に制度改定を理由にSFCを退会した方は、2027年3月31日までに専用フォームから再入会を申請できます。条件の詳細はANA公式でご確認ください。
もう一度、自分で旅を選ぶ
この連載の第1話で、私は航空会社を自由に選んでいた時代のことを書きました。空港へ着き、最初に出る飛行機へ飛び乗っていた頃です。
やがてマイルを追い、一つの航空会社を選び、SFCを手にしました。
そして今、もう一度、自分の旅を自分で選ぶ時が来たのだと思います。
カードを持つことが旅の目的ではありません。300万円を目指す方を否定するつもりはありませんが、数字に追われる旅は、私が始めたかった旅ではありませんでした。
私が守りたいのは、これからも自分の心が動く方へ、自分のペースで旅立てる自由です。
答えは決めました。
それでも、長く信じてきたものの形が変わる寂しさは残っています。その気持ちまで無理に片づけず、SFCともうしばらく旅を続けてみようと思います。

(私のSFC史・完)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 今後も旅の情報とともに失敗談も書いていきます。どうぞよろしくお願いいたします!
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